「研究に向いてない」と思ったら読んでください


最近は、あまり進まない実験、博士課程同期のハイレベルな発表、さらには教授とのミスコミュニケーションも重なり、メンタルが良くない方向に向かっていました。

この隙を待っていたかのように、決まって頭をよぎるのがこの言葉。。。




「俺って、研究者に向いてないんじゃね?」

 

筆頭著者としての論文がない人(僕です)や、自分が理想としている研究者像とのギャップを感じている人は、「自分は研究に向いていないのではないか?」と、漠然とした疑問を抱いていませんか。



一方で、大学院在学中にファーストオーサーで論文をバンバン掲載、30代前半でNature, Science, Cellに投稿し彗星の如く若手PIに昇進する「研究者に向いている人たち」もいます。

そんな研究に向いている輝かしい人たちを脇目に、僕はその世界への入り口をあたふたと探し続けているような感覚です。



「研究に向いてない」という思いが頭をよぎったときは、「研究に対する思い」や「研究者の向き不向きに関する疑問」を自分の中で整理してみる良い機会かもしれません。



その思いは弱音なのか? 心の叫びなのか?


「研究に向いてない」という言葉が心に浮かんだ時、頭の中では何が起こっているのでしょうか。

研究で成果が出ず疲れも溜まり、メンタルが弱ってしまった結果、思わず出た「弱音」なのでしょうか。

それとも、本当は研究をやりたくない、もうこんなことしたくない!という「心の叫び」なのでしょうか。 



「研究に向いてない」という言葉が浮かんだ時には、自分の「弱音なのか、それとも心の叫びなのか」を見極めることが重要だと思います。

弱音なら研究を続けるべき、心の叫びなら新たな一歩を踏み出すタイミングなのかもしれません。 



自分の場合は弱音だと思う


おそらく僕の場合は「弱音」だと思います。

弱音だとわかる理由は、以前自分の「心の叫び」を聞いたことがあり、今回の「研究に向いていない」という思いは心の叫びではないように感じるからです。



心の叫びが聞こえたとき


僕は大学卒業後、日本で英語を教えていました。

幼少期から大学卒業までアメリカに住んでいたので、英語は職探しの武器になりました。

大学時代に自分のやりたいことが見つからず、アメリカ社会に溶け込もうとするのにも疲れ、どこか違うところに行きたくなりました。



そんな僕にとって行けそうな場所が日本でした。

子供時代、日本で夏休みを過ごしたこともあったので、一人でもなんとか生き延びられるだろうと思い、日本で働くすべを探しました。

そして見つけたのが、英語を教える仕事でした。



英語を教える仕事は楽しかったのですが、一生やりたいという気持ちにはなれませんでした

最初はこの気持ちを無視して強引にがんばろうとしましたが、「なんか違う」という心の叫びがだんだん大きくなっていきました。

じっくり考え、英語を教える仕事を辞める決心をしました。



心の叫びを聞き取り、新しい一歩を踏み出した


英語を教える仕事を辞める決心がつくと、「研究に挑戦してみたい」という気持ちが芽生えてきました。

大学時代は生物学を専攻したので、なんとなく生物系の仕事に惹かれていたのかもしれません。

研究に携わるいくつかの職種に応募し、幸い、ある研究室から技術員として雇ってもらうことができました。

技術員として働くうちに、研究室の医学系テーマに魅力を感じ「研究者・研究職を目指したい」と思うようになりました。

 

思えば、回り道をして研究とは関係のない仕事を経験したからこそ今こうして研究をする意義と深く繋がることができているのだと思います。

しかしそれでも「自分は研究者に向いていない」と感じることは多く、研究が楽しく感じられないときもあります。 

そのため、自分の心の整理をしながら研究者として成長することを目指しています。



弱音と心の叫びを聞き分けるための3つのクエスチョン


研究に向いてないという思いが「弱音なのか、それとも心の叫びなのか」を紐解くためのクエスチョンを3つ考えてみました。



1.研究を始めたばかりですか?


2.研究をする意義を感じていますか?


3.楽しそうに研究をしている同僚はいますか?



それでは1つずつ考えてみましょう。





1.研究を始めたばかりですか?


もしもあなたが研究を始めたばかりならば、「研究者としての向き不向き」はまだわかりませんよね。

将棋を始めたばかりの人が上手いはずがないのと一緒で、研究を始めたばかりの人は、研究が難しいと感じやすいのではないでしょうか。

ビギナーズラックはあるかもしれませんが、ほとんどの場合、思うように進まない状況が一定期間続くと思います。

ですから、この段階でしんどいから「研究をやめたい」「研究者になるのを諦めたい」と思うのは、まだ早いように思います。 

研究が好きで研究を始めたばかりならば、「研究に向いてない」と思うより、自分なりの戦い方を身に着けることが大切だと思います。



世の中の成功者は、早咲きもいれば遅咲きもいます。

仮説ドリブンでゴリゴリ研究する人物もいれば、探索的にコツコツ研究を重ね、大村智先生(2015ノーベル生理学・医学賞)のように大発見をした方もいます。

周りに研究者に向いているような人や尊敬する先輩がいれば、真似をしてみてもいいですし、自分がシンパシーを感じる様々な研究者のタイプについて調べてみても良いと思います。



そのほか、自分の研究生活について簡単に日記を書くのもオススメです。

日記を見返せば、研究者としての成長を客観的に振り返ることができるので、後に財産になると思います。 



2.研究をする意義を感じていますか? 


もしもあなたが研究に意義を感じているのであれば、あきらめるのはもったいないと思います。

せっかく意義のある仕事に出会えたのですから、この出会いを大切にして、研究者としてのスキルアップを図ってみてはいかがでしょうか。 



真剣に向き合っていればいるほど、早く成長したいという思いは強くなります。

そして、理想に追いついていない自分のことを「研究に向いてない」と感じてしまうのかもしれません。

もしかしたら、研究能力を習得する必要があるかもしれませんし、ただ自分に厳しいだけかもしれません。 



いずれにせよどんなに小さくてもいいので、研究での成功体験を思い出し、自信をつけていくしかないように思います。

周りの人とはできるだけ比べないようにして「自分は自分のレースを走っている」と思い込めば、心が楽になるかもしれません。 

また、自分を勇気づけてくれる本や映画が心の支えになってくれるかもしれません。

先人たちの知恵を遠慮なく借りて、前に進む力を貰いましょう。 



3.楽しそうに研究をしている同僚はいますか?



あなたが在籍している研究室でラボメンバーの多くがどんよりと研究をしているのであれば、そもそもの問題は研究室にあるのかもしれません

この場合、「研究に向いてない」と「今の研究室と今の研究スタイルに向いていない」勘違いしてしまっていることも考えられます。

もしかしたら「研究室を変えたい」という心の叫びが聞こえているのかもしれません。

環境を変えることによって、研究がまた好きになれるかもしれません。

もし違うラボに移れそうな状況であれば、一歩踏み出してみてはどうでしょうか。



上記3パターンに当てはまらない場合は心の叫びかも?


研究を始めたばかりでない方、研究に意義を感じられない方、研究室に問題がなくても研究の楽しさを感じられない方はどうでしょう。

このような場合、「研究に向いていない」という思いは心の叫びなのかもしれません。



あなたが仕事から得たいモノを「研究」は提供できていないのではないでしょうか。

例えば、コミュニケーションが上手な人や体を動かすのが好きな人は、研究室にこもって作業をすることを息苦しく感じるかもしれません。

であれば、研究以外の仕事に挑戦してみる良い機会ではないでしょうか(アルバイト、副業、ボランティアなど)。



他の仕事を試してみて心に響くかどうかを感じ取ることができれば、どのような仕事が自分に合うのかを見極めることができると思います。

そもんずさんの「好きなことを仕事にしよう」のワナにハマらない方法を読むと、次に取るステップのインスピレーションになるかもしれません。 



あなたにとって「研究者に向いていない」という思いは弱音でしょうか、心の叫びでしょうか?


「研究に向いてない」という思いが頭をよぎった時は、あっさりと片付けず、その思いと深く向き合ってみてください。

自分の本当の声を聞くことで、より自分らしく生きていくきっかけになるかもしれません。

今回はカメの投稿でした~。



おまけ:

自分の心の声を聞き取るには「死」を意識することも一つの手です。


がん患者専門の精神科医の清水研先生が書かれた本「もしも一年後、この世にいないとしたら。」を読み、自分は本当に何がしたいのか、ということを深く考えさせられました。

新しい視点から自分の将来を考え、現在を意識した生き方に挑戦してみたい方におすすめです。




この本はkindle unlimited読み放題対象の本なので、kindle unlimited会員の方は無料で読むことができます。

kindle unlimited の30日無料お試し体験もあるので、その期間中に読むと、会員でなくても無料で読むことができます。










論文が進まなくてメンタルが弱っているときには、この本がおすすめです↓





研究の進め方や論文の書き方が具体的に書かれていて、心理的につまずきやすいポイントにも触れているので、自分にとってはすごく参考になりました。


研究者として少しずつ成長したいと思っている人に読んでほしい記事:

焦ったときに研究から逃げないための対策6つ


研究者の向き不向きについては、博士課程の振り返りでも考えてみました:

ほろ苦い博士課程:研究の進め方、研究者の向き不向きを振り返ってみた


研究を続けるか、辞めるかについて悩んでいる方に読んでほしい記事:

私が研究者をやめた理由

私が研究者を続ける理由 〜 ポスドクを辞める判断基準 〜
















4 件のコメント :

  1. 初めまして。博士後期課程一回生の者です。
    研究うまくいかなくてへこんでる時にこのサイトにたどり着きました。
    コラムを読んでると分かるなぁ~ってことが多くて、よし、負けずにがんばろうって思えます。
    忙しいと思いますが、更新楽しみに待ってます(* ゚∀゚)

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    1. 嬉しいコメントありがとうございます。
      僕もまだまだいろんな不安と向き合いながら、研究者としての成長を目指しています。
      一緒にがんばりましょう!
      (全然聞かれてないけど)一つだけアドバイスをさせていただけるなら、不安を共有できる博士課程の仲間を見つけることが大きな支えになると思います。
      不安を共有、そして少しずつ解消に向けていろんなことにチャレンジしてみることが僕にとっては一番良い薬です。
      ブログの更新も不定期ですが、これからも続ける予定です。
      記事を楽しみに待っている方がいると知ることは、記事を書く大きな原動力になります!

      ーカメ

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  2. はじめまして。
    文系大学院修士2年に在籍している者です。
    今年に入ってから研究がしんどいと思うようになり、悶々とした日々を送っております。
    好きで始めたはずのことから逃げ出したくなっている自分への怒り、他の学生や就職した同期と比べて自分には何もないという劣等感、こんなことでへこたれているようでは自分はやはり研究に向いていないのかという落胆や後悔など、様々なネガティブな感情が渦巻いています。
    それでもここで投げ出したくはなく、なんとか研究に前向きになれるヒントはないものかと藻掻いた結果このサイトにたどり着きました。
    研究が上手くいかなくてネガティブになるのは皆同じなのだと知ることができ、またそのような場合の具体的な対策も知ることができて、救われたような気持ちになりました。
    まだ始めたばかりなのだから、もう少し粘ってみようと思います。
    このようなブログを書いてくださり、本当にありがとうございます。
    挫けそうなときにはこのブログを読みつつ頑張ります。
    長文失礼いたしました。

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    1. まーちさん、心のこもったメッセージ、ありがとうございます。

      僕も博士課程を始めたころに「研究に向いてない」という想いが一層強くなり、どうしようもできない不安に締めつけられていました。

      心の奥底では「研究をやりたい」と思っていたのですが、全く研究が進まず、焦燥感に駆られ、非生産的な研究の進め方をしていました。

      そんな中、「研究者に向いてない」と検索してみると、「研究者に向いてないと思っている時点でもう研究者に向いてないから早いうちに辞めたほうがいいよ」の趣旨の記事が多く、とまどいました。

      そこで自分なりの「研究に向いてない」という想いとの向き合い方をこの記事や他の記事で整理してみることにしました。自分なりに考えてみると「今の研究テーマにやりがいを感じるから、向いてなくても、もう少しやってみよう。」という結論に至りました。最近では「やりがいを感じる研究を楽しく続ける研究スタイル」が目標です。こんな考え方で良いのか不安ですが、自分にとっての現時点での正解はそこにあると思っています。

      この記事が、まーちさんに前向きに研究と向き合うきっかけになったようですごく嬉しいです。大学院生活、大変だと思いますが、徐々に楽しいことややりがいを感じる瞬間が増えてくると思います。

      影ながらまーちさんの応援をしております。

      今後も不定期ですが、ブログを更新していきますので、是非また遊びに来てくださいね。

      -カメ

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